STUDIO6ショートストーリー第三話〜言えなかったありがとう
小さい頃から、僕は無類のおじいちゃん子で、
散歩にいつも連れて行ってもらっていた。
ただ手をつないで、二人で近所をくるくると歩いていた。
おじいちゃんのしていた仕事の話だとか、
昔兵隊さんだった時の話だとか、沢山聞かせてもらっていた。
でも、高校生くらいになると、話しかけられてもはぐらかしてばかりになった。
たまにちゃんと話したら、「おじいちゃん久しぶりに孫と話せてすごく喜んでいたよ」って言われていたっけ。
大学生になったある日、おじいちゃんが事故で亡くなったという知らせを聞いた。
話したい事が沢山あるのに、もういくら話しかけても答えてはくれなかった。
おじいちゃん、ありがとう。
それだけでも伝えたかったな。
心残りの大半は、言えなかった「ありがとう」だったりする。
今のうちにありがとうを贈ろう。