STUDIO6ショートストーリー第五話〜父からの贈り物
内気だった私は欲しいものがあっても、
なかなか親に伝えられない子供だった。
5歳になった私の娘が、欲しいおもちゃの前で
じっと動かずに黙っているのを見ると、
「自分にそっくり」と思わずにはいられない。
あれは小学校にあがる前だから
きっと3歳か4歳頃のことだろうか。
その日はたまたま父親と二人きりで出かけて、
ふとおもちゃ屋さんに立ち寄った。
そこには、当時女の子の間で大人気だった
キャラクターの人形が置いてあった。
仲の良い同じ社宅の友達が、
それを持っていてどうしても欲しかったものだ。
案の定、私は「欲しい」と言えず、
じっと見つめるだけ。
父親は気づいているのか気づいていないのか、
そのまま何も言わず二人で店を出た。
数日後、珍しく仕事を早く切り上げて帰ってきた父から
プレゼントを手渡された。
私が欲しがっていたあの人形が入っていた。
プレゼントをもらったことも嬉しかったけれど、
父が私の欲しいものに気づいてくれていたことが
何より嬉しかった。
不思議なものでその時父と話した会話は忘れても
あの日の優しい瞳だけは今も忘れていない。
たとえば、
家族の絆を深めるのが
フォトスタジオであってもいい